ブログ版 空冷Zとの戦い

Kawasaki Z1Rに関するブログ?

ときには昔の話をしようか

マツコの知らない世界華原朋美の『I'm proud』を取り上げてましたが、この曲がリリースされ、まさに人気絶頂だった1996年当時、ワタクシはオーストラリアに滞在しておりまして。

当時の男子といえば10人中13人くらいは朋ちゃんに恋していたので、シドニー市内にあるカラオケ屋にソプラノ音域の女の子を連れていっては、何度もI'm Proudをリピートして「心に沁みるのう」と灌漑にふけっておりました。
カラオケ屋さんも「なんだ、こいつら」と思ったでしょうね。

「いちいち客の歌なんか気にするかいな」
「自意識過剰だ」

と思われるかもしれませんが、実は当時の海外のカラオケ屋には、LD(レーザー・ディスク)チェンジャーがなくて、コントロールルームと呼ばれる壁の四方がLDの棚に囲まれた部屋で、各部屋からのリクエストに応じて、一枚、一枚、手作業でLDをデッキに入れて再生していたのです!

テルマエ・ロマエ』で日本のマッサージチェアを見たルシウスが「奴隷が中でがんばっている」と想像した、まさにあの状況です。
もちろん、お客さんはそんなことを知る由もないのですが…
では、何でこういうことをやっていたのかというと、80年代から90年代にかけてカラオケが大流行した時代、その頃は、LDソフトが沢山収納された機械が各部屋に置いてあり、リモコンで指定した曲を入れると指定されたLDを再生してくれたわけです。
つまり、500曲くらいのワンセットが、部屋の数だけ存在してました。

その仕組みを海外に持ち込もうとしたのですが、いかんせん、LDソフトは高額でしたし、機械を輸送する費用もかかりますので、とりあえず数部屋分の設備を持って行ったのでしょうが、当時、カラオケといえばとんでもない人気レジャーでしたので、それでは客の需要に追い付かなかったのは、容易に想像できます。
とはいえ、部屋ごとに一式そろえたらコストもかかります。
苦肉の策として、チェンジャーと同じ機能を持つ部屋を用意して、各部屋に映像を流すようにすればいい、というアイディアが生まれたのでしょう。

ところが、これがまさに重労働。
週末の夜ともなれば、あっちこっちから日本人がやってきて(なかにはローカルのアジア系も)、ガンガン、リクエストするわけです。
先ほど触れた「I'm proud」のような人気曲はリクエストもひっきりなし。

しかし、ディスクは基本的に1枚だけ。さらに同じディスクに数曲入っているので、朋ちゃんのI'm ProudとGLAYのBELOVEDが同じディスクでかぶったりすると、BELOVEDを歌い終わってもらわないとI'm Proudが再生できない。かといって待たせるわけにはいかないので、先に入れたI'm Proudを飛ばして、次の曲を再生するわけです。
曲が終わりそうになると、デッキと連動したアラームが「ピーピー」となって、次の曲を準備するわけです。もちろん鳴ってから探すと遅いので、次のリクエスト曲はデッキの隣に出しておいて準備するのですが、

「おい、D34番、そっちにある?」
「あー次かけるんだけど」
「もう2曲飛ばしてっから、先にこっちに回して!」
と、なかはてんやわんや。
あまり飛ばしてると、部屋のインターホンが鳴って
「予約した曲がぜんぜんかからないんだけど!!」
と怒られる。

何でそこまで知っているのかというと、ワタクシ自身、そこで何カ月も働いていたからです(笑)。
90年代のヒット曲、たくさんいい曲ありますけど、おかげでヒット曲ほどワタクシたちの心に深い爪痕を残していったわけです。

それは言い過ぎとしても、よい意味で心に足跡を残した曲もあります。
ヘヴィメタル・バンドのメンバーだった自分としては(楽団四季はヘヴィメタル・バンドだと思ってるのはどうやら自分だけ)、表だってJ-POPを賛美することはなかったので「いいな」というよりは「やられたな」とKOされる曲=印象深い曲として心に残っています。

モーニング娘。恋愛レボリューション21」なんかは最たるもので、これはいま聴いてもカッコいい。気の迷いかな、と思った時期もありましたが、20年近くたった今も色褪せません。
バンドでは編曲にも口を出しまくってたので、アレンジの細かい部分がすごく気になる方なのですが、この曲は本当によく出来ています。
一生に1回でも、こういう曲を書けたら最高なんじゃないでしょうか。
そういう意味で、恋ダンス(本当の曲名は恋)はガッキーの可愛さに目がくらみそうになるんですけど、目を閉じて曲に集中すると、なかなかどうしてカッコいい曲です。ギターのカッティングリフなんか、これでもか!というくらいカッコいい。この曲のメインディッシュみたいな処なのに、あえてオープニングには、やや気持ち悪いメロディを持ってきてるのも勇気あるな、と思います。

で、昔の話というかカラオケの話に戻りますけど、その後、インターネットなどの通信回線が飛躍的に進歩して「通信カラオケ」が登場。
それでも黎明期は「LDの方が音もいいしアーティスト本人が映像に登場する!」とLDに軍配が上がっていたのですが、次第に置き換わっていったのは御存知の通り。
海外でLDを入れ替える仕事もなくなったことでしょう…



イラストは「空冷Zとの戦い」より抜粋。