ブログ版 空冷Zとの戦い

Kawasaki Z1Rに関するブログ?

キリン

誰の為の映画なんだろう…

実は、ウチにもGSXR乗りの2代目(?)キリンのエピソードまでは単行本があったりするんですけど。
キリンVSポルシェ、マサキが登場した頃は「公道最速」がウリだったけど、だんだんと「速いとは何ぞや」みたいな話も出たり、登場人物が「公道でかっとばすこと」を否定したり、後に物語の狂言回しとなるマスターも立ち位置が変わったり…

バイクにしろクルマにしろ自転車にしろ、趣味性の高い(強い)ビークルに乗る人は、矛盾を抱えていると思う。
それは、自分も同じ。
移動手段として乗るだけならZじゃなくてもいいし、趣味で乗るにしても、環境のことを考えたら、車種を選ぶべきだと思っている。
自転車ならエコで安全なのか、というと、公道でガンガンぶっ飛ばして、ブレーキのない競技用マシンに乗る人だっているし、現に交通事故で死者まで出している。

キリンに長年の友人であるバイク屋
「もうスピードなんてどうでもいいじゃねえかよ」
とスピードの限界を求める友人をなだめますが、真木蔵人扮するキリンが真っ向から反論します。
「お前は(中略)向こう側に行っちまった、ただの中年なんだよ!」
ちなみに、向こう側とは、バイクで速さを求めることがなくなった、紅の豚のいう「飛べない豚はただの豚だ」と同義語だったりすると思われます。

このやり取りにバイク屋さんが
「そんなにスピードで勝負したいなら、レースに出ろよ」
「独りで死ぬのは勝手だけど、無謀な運転のせいで誰かが巻き添えになったらどうするの?」
と、正論で否定しきれないあたりが、バイク屋さんも同じ穴のムジナで、なおかつ、後にキリンのバイクを整備してしまうのですが。

結局、キリンが固執するスピードは、誰かと比較して速いということではなくて、消化不良に終わった自己実現とか、内的な問題であって、たまたま勝負に乗ってくれた「デカ尻女=ポルシェ」に、自分のもやもやしたものを投影しているに過ぎないんじゃないかと思います。

ネタバレになったら申し訳ないので、楽しみにしている人はここから先を読まない方がいいでしょうが、ポルシェとの対決が終わった後、憑きものが落ちたような表情で描かれています。
キリンというと、ノーマルカタナでポルシェに挑んだ「弱い立場のヒーロー」という面もありますが、少年・青年期に消化しておくべきことだったモヤモヤを抱えたまま「いい大人」になったオッサンが、ポルシェとの勝負といいながらも、実は自分のモヤモヤと向き合い、消化(昇華)させるところが見ものであり、そのあたりをピックアップしていれば「ありがちな、つまらんバイク映画」にならずに済むだろうし、バイクに乗らずとも何か悶々としたモノを抱えたまま歳を重ねた大人たちに支持され、ヒットするような気がします。