塩釜には海水浴場がないので、幼いころ、よく家族で七ヶ浜の海を訪れた。
特に地元では「外人浜」と呼ばれる高山外国人避暑地(山の軽井沢、湖の野尻湖、海の高山と称され「日本三大外国人避暑地」のひとつ)は、好きな浜辺のひとつだった。
外国人の家族が大勢訪れているのを珍しそうに眺めてみたり、浜の端にある窪みを「謎の洞窟」といってみたり、確か数年はそのままになっていた骨だけになった海ガメの死体に「きっとものすごい大きなサメか、海の怪物に襲われたのだろう」と、水曜スペシャルと同じ高揚感を抱いたりしていた。
とんでもない事故を起こして、友だちと死にかけたのも、この街だった。
思い出深い、この七ヶ浜も大きなダメージを負っていた。
家屋の多くが倒壊、砂浜にはコンテナが転がっている。
もっと先へ進もうとしたが、検問が敷かれ、入ることは出来なかった。
低い場所に建てられていた家は、ここも例外なく津波に叩きのめされていた。
田園もしばらくは使いものにならないだろう。
美しい、のんびりとした港町に戻るのは、いつのことなのだろう。