普段、古めかしい4気筒はロードばかり走っているし、林道はちょっとテイストが違うかな、とあまり走ってこなかったのだが、案外やってみると面白い。
遠く離れたところの林道を目指して走るのは125ccではしんどいが、林道の「とりつき」まで1時間位で行けるなら、それほど悪くはない。
先日、走った林道も到着まで1時間程度。
こないだ、途中から入った林道を始まりから走ってみることにした。
大和町にある宮床ダムに沿って走る国道457号線が林道へのアプローチとなる。
某有名墓石店の脇から北上するように山を目指す。
田畑を突っ切る道なので、農道と交差したり分岐したりで初見で走ると迷いそうになるが、目指す方向さえ合っていればOK。
日本の原風景というか「となりのトトロ」にも出てきそうな田んぼ道を進んでいくと、やがて道は1本にまとまり、高野原林道へとつながる。
この辺はアップダウンもそれほど厳しくないし、普通乗用車も入ってくる。
まず登場するのが「光明の滝」。
道から少し降りていくと、こんな滝がお目見えする。
実物は、これの10倍以上は美しく、こじんまりとしているけど雰囲気は悪くない。
もう少し天気が良ければ、いい感じに見えるでしょう。
ここから、さらに走っていくと前回もみた「白糸の滝」が登場。
最初に「光明の滝」を見てしまうと、ちょっと迫力に欠けるけど、向かいには渓流が広がっており、トータルの景色としては悪くない。
ダートロードは、ほどなくして終わり、舗装道のワインディングを登っていくとスプリングバレースキー場の根元に到着する。
山を降りる(左に折れる)と泉ヶ岳スキー場、山を登る(右折)と、スプリングバレーのゲレンデが左手に見えてきて、どんどん道を登っていくと大平桑沼林道に入る。
踏み締められた林道だが、轍や山からの水で砂利がえぐられている。
ヘアピンなど急カーブがないのでオンロードでも行けなくはないが、フロントを取られたら即転倒する。
パワーバンドとの兼ね合いもあるが、ひとつ高めのギアでトルクをあまりかけ過ぎないように走った方がいい。
ややもっさりしてしまうが、唐突にアクセルをあおってしまって、タイヤがグリップを失ったらエラいことになる。
あ、これはもちろんオンロードでダートに入った場合で、オフ車は迷うことなくガンガン走ったらいいでしょう。
大平桑沼林道を抜けると、登山道の入り口が。
「ここは登山道?」と迷う感じの方が升沢林道。
山を下るようにして行くのが種沢林道。
升沢林道は最初こそ、急な坂を駆け上がる感じだが、桑沼まで来るとしばらく平坦な道が続く。
季節もしくは空模様にもよるのだろうが、今の時期は鬱蒼としていて、あまり良い感じには見えなかった。
それほど激しい起伏もなく、山菜とりが目的なのか、普通の軽自動車で入っている年配者もいたりして「意外にポピュラーな道?」と驚く。
あまり荒れた道ではないので楽に走れるのだが、砂利の量の少ない平坦な道だけあって降り出した雨が溜まる傾向にある。
水をたっぷりと吸った泥は、相当ぬかるむ。
アンパイだと思って速度を落とすとスタックすることもあるので、ここは一気に渡った方が無難。
鬱蒼とした道を進んでいくと、木々を伐採するエリアに出る。
ここから先は、グネグネとした峠道が続く。
平日、ここを通る場合は、伐採した樹木を満載したトラックに注意。
出会ったら、クルマもバイクも100%すれ違うことは出来ない。
おそらく土日祝日は休みのことが多いだろうから、その点は十分に気をつけて邪魔にならないように。
升沢林道のゴールは旗坂キャンプ場。
ここから次の林道に接続しておらず、いったん県道147号線に向かうように山を降りると左手に『宮城県内水面水産試験場』という施設が見える。
さらに少し進むと、左側に林道への入り口が見える。
このまま進めば147号線にぶつかり、風早峠の名水や嘉太神林道へのアプローチに繋がる。
ここからが「小荒沢林道」がスタート。
船形山の山腹を目指して走る林道なので、どんどん駆け上がる感じ。
道もギュっとしまっていて、走りやすい。
序盤は道幅も広くて、思いのほか快走路なんだろうか、とも思えてくる。
峠道から時折見える高度感のある絶景も素晴らしい。
ところが、だんだんと道幅が狭くなり、細かいコーナーが連続する場面も。
「まるでジュラシックパークみたいだ」
と、思っていたら、突然、黒い塊が目の前を横切り、藪をかき分けるようにして登っていくではないか!
人生初の熊との遭遇。
大きさは大型犬くらいの大きさだから、まだ子熊なのだろう。
不器用に登っていく姿は可愛らしかった。
が、近くに親がいる可能性もある。
北海道のヒグマより危険ではないが、本気で襲い掛かってきたらひとたまりもない。
本当は大滝キャンプ場へ行こうと思ったのだが、何となく嫌な予感がするので下山することに。
10分くらい走った頃だろうか、木々に覆われて薄暗くなった直線のど真ん中に、真っ黒でモコモコした動物が立ち止まり、じっとこちらを見ている。
大きさは、かなりでかい。
距離は随分と離れているはずなのだが、ヘルメットのシールド越しでも、視線や表情が見て取れた。
分厚い鉄板に囲まれたクルマだったら笑いながらスマホを向ける余裕もあるだろうが、ちょっとでも視線を外した瞬間に突進してくるかもしれない。
クマと出会ったら、視線を外さず、ゆっくりと後ろに下がりましょう、というけど、バイクに跨っているライダーはどうすんの(笑)?
とりあえず、突進してくる可能性もあるので、1速にギアを入れてこちらもチャージの準備。
DTの車重は100kgくらい?ライダーは服とメットで75kgくらい?
一方のクマは?ここにいるのはツキノワグマ。
デカく見えるが、200kgはないだろう。
馬力はこちらが上だから、よーいドンでぶちかませば、物理法則を考えれば弾き飛ばせるはず。
もちろんバイクと自分の耐久力も考えなければならないが、一発勝負で吹き飛ばせば、向こうは戦意喪失するんじゃないだろうか。
アクセルを煽り、ホイルスピンをかまして「こっちはいつでもいいぞ」と威嚇したら、プイと横を向いて茂みの中に行ってしまった。
ここで「やった!逃げたぜ」とか喜ぶモブキャラは、モンスターにぶっ殺される運命なので「ヤツは茂みに隠れながら距離を詰めて来るんだ」という脳内設定で、今度はこっちがダッシュで逃げる。
ダッシュとはいっても、ダートの峠の下りは危険がいっぱい。
フカフカの砂利の時もあれば、ぬかるんだ泥もある。
慌てて転倒したら、草むらから襲い掛かってくるかもしれない。
とにかく転ばず、しかし急いで下りなければならない。
写真を撮る余裕が出てきたのは、しばらく下ってから。
岳山林道まで来れば、もうクマに遭遇することもないだろう。
割と真っ直ぐな一本道が5km以上続く。
無事、舗装道まで到着。
林道の入り口からここまで、およそ1時間。
小荒沢林道と岳山林道は合計で20kmになるらしいのだが、精神的にはそれ以上のボリューム感だった。
ちなみに登山ガイドの友人いわく、6月は子連れのクマが多く、ちょっとおかしなクマもウロウロしているので要注意なんだそうです。
今日はまた一段とデロデロになりました(笑)。
この頃、どんなに距離を重ねても高揚感が得られず、もはやバイクに対する感性が鈍ったというか、もう新しい発見はないのではないかと諦めていた。
ところが、林道にはオーストラリア一周に出た時に匹敵する楽しさが満ち溢れていた。
今シーズンは、林道開拓の予感がしてならない。