ブログ版 空冷Zとの戦い

Kawasaki Z1Rに関するブログ?

ロボット⑥

人が乗って操縦するロボットを誕生、かつ運用するためには、きちんとした目的が必要です。
といいたいところですが、非常に残念ながら、現実世界において最先端のテクノロジーは人命救助よりも、まず戦争の道具として利用されてしまいます。
特にロボットが人間の力を倍増するような能力を持っていればなおのこと、まずは兵器として進化を重ねていくでしょう。スポーツなどの娯楽、土木工事などの産業、救難作業などに使用されるのは、それからです。そして、民間で発展した技術が軍用にフィードバックされるのです。

では、兵器としてのロボットは、どのような役割を担うのでしょうか。
モビルスーツバルキリー(F-14を模した戦闘機がロボットに変形します)のように、地上だけではなく、大空を自由に飛び回るでしょうか。
ここでは、とりあえず「空中戦は出来ない」とさせてください。

何故なら、やはり空では戦闘機に勝るものはないからです。航空力学上および物理学上、人間の形をした機械が、戦闘機と同等の運動性で空を飛び回ることは考えにくいからです。たとえ、ものすごい推進器を搭載して、スーパーサイヤ人のように飛べたとしても、手に持った銃器で狙いをつけた瞬間、エアロダイナミクスが変わって、姿勢を保つことが出来ないと思います。

バルキリーのような「可変戦闘機」なら、空中戦に対応できるように思えますが、空中戦に対応できるのは、飛行形態の時だけです。マクロス・ゼロという作品では、飛行形態からガウォークに変形する際の姿勢制御について「とても高い技術を要する」と描写しておりました。確かに音速に近い速度で飛行中に変形を行えば、ものすごい空気抵抗が生じるわけですから、それこそ「神の手」が必要かもしれません。
それだけでは済まず、各関節に負担がかかって構造材が破断、機体がバラバラに…なんてこともあるのではないでしょうか。
よって、ここでは、空中戦は戦闘機に任せた方が吉ということになります。

では、戦車などに随伴し、運動性能と装甲を活かして敵の防御ラインを突破することが大きな任務というのは、どうでしょうか。
つまり、陸戦兵器としてのロボットです。



先の「パイロットがヘルニアまたは鞭打ちになる云々」でも述べたように、前線まで歩かせることは好ましくありません。戻って読むのが面倒な方のためにもう一度お話すると、人間は歩く度に、上体が上下します。
人間ですから、数センチ程度の「揺れ」になりますが、大きなロボットでは、それがメートル単位となります。
つまり、パイロットは歩く度に上に行ったり、下に行ったりするわけです。
ジェットコースターが苦手なワタクシとしては、想像しただけで気持ちが悪くなりますし、しっかりとショックを吸収してくれないと、この頃痛めている腰も心配です。


ですから、前線までは自走せず、なるべく積載車などで移動します。
そのため、あまりにも大きい機体はNGです。
運搬にも支障をきたしますし、自重の増大による機動力の低下、それより何より大きくなることで、敵に部隊の位置を知らせることにつながります。
できれば、全高は5m前後、重量は10t以下が望ましいです。
それでも他の車輌よりも目立ちますから、よく狙い撃ちされます。使い捨て式の追加装甲があると、なおよろしいと思われます。
乗員は1名。重火器を装備する機体はドライバーと砲手として2名ということもあるでしょう。


通常における武装は、機体胴体部に直接マウントされた銃火器です。
前にも伸べたように、銃を握らせても、腕に取り付けてもいけません。腕が故障して機能停止した場合、攻撃手段がなくなるからです。
腕の役割は、銃弾や爆薬以外の方法で敵施設や敵機を破壊する時に使用します。ですから、重機に準ずる破壊力を持たせます。手指は、あまり構造を複雑にはしない方がいいでしょう。プライヤーのように、ものを掴む、はさむことが出来れば、OKです。構造を単純にしたとはいえ、拳で殴るのはもってのほかです。
できれば、指は腕の途中、人間で言えば手首の上あたりから生やして、本来手がある部分には、破壊用の杭や爪のようにしておけばよいと思います。

ただし「殴る」という動きをさせるためには、多くの可動部品が必要となります。トラブルの確率も部品点数に比例します。多くの部品で構成された自動車のエンジンも、たったひとつの部品が動かなくなっただけで、火が入らなくなります。構造の複雑さによる発生するトラブルを解決しなければ、機械の腕に殴らせることはやめた方がいいでしょう。
それに、殴る動きをやっていただければお分かりのように、身体を横にひねるという動作が発生します。
操縦席の位置にもよりますが、殴るたびにものすごい勢いで身体ごと横方向に反転します。
機体の不具合よりも、パイロットの健康が気がかりです。



次に脚です。
脚部よりも上の部分がどれほどの質量を持っているかにもよりますが、各関節にかかる負担は想像以上だと思われます。歩く際は、一瞬、1本の脚に全重量がかかるわけですから、相当丈夫に造らないといけません。
各関節の負担を軽減するためには、なるべく軽量化をはからなければなりません。ただし、装甲を薄くすれば、被弾時生存率が低下してしまいます。

駆動輪、無限軌道ではなく歩行を採用するのは、走破性の高さ、すなわち機動性を評価してのことですから、ジャンプとまではいかなくても、数メートル下の場所へ飛び降りるくらいはやってもらいたいものです。
とすれば、全重をどの程度で「限界」に設定しなければならないのでしょうか。
椅子の上から体重計にでも飛び降りれば、目安が分かるような気もしますが…

同時に、足の面積も重要な要素となります。
前線がどういう状況かにもよるのでしょうが、あまり小さな足では地面に足がめり込んでしまいますし、大きな足にしてしまえば歩きづらくなるでしょう。
また材質も装甲と同じというわけにはいきません。ただの鉄板では、どんどん磨り減っていきますし、雨天時などは踏ん張りが利きません。おそらく、転倒の原因にもなります。

個人的には、戦闘におけるダメージよりも、バランスを崩して転倒し、それによる損壊が深刻な気もします。
クルマに長い脚をつけて、倒したら車体がどうなってしまうか…お分かりいただけますよね。
といって、壊れないように丈夫に造るとなれば、自重増加で運動性が犠牲になります。

であれば、倒れても壊れないではなく、副脚などによる転倒防止策をとった方がいいでしょう。あるいは、自立が不可能となった時点で、わざとしゃがんで手をつくといった動作をプログラミングしておき、機体の保全と操縦者の生存率を高めるようにすべきでしょう。


頭はどうしたらいいでしょう。
身体が多少不恰好でも、頭、つまり顔がハンサムならば、ヒーローロボットとしての威厳が保てます。
ある程度、自由に造ってもいいのではないでしょうか。
が、頭の役割とは何でしょう。

ガンダム以降のロボットは、密閉された操縦席に外部映像を投影するためのカメラが頭部についています。
つまり、潜水艦の潜望鏡のような役割なのです。ロボットが起動している間、目をモチーフとしたカメラが点灯しているのは、何故でしょうか。
「ここが目ですから、狙わないでください」とお願いしているのでしょうか。

カメラとしての機能を持たせるのであれば、あんなに大きく造る必要がないような気もします。
それと、一部のモビルスーツのように、カメラ付近に銃火器を配置するのはやめるべきでしょう。
精密機器の傍に火薬を置くのは感心しません。
また、電磁波を発するビーム兵器などを傍におくと、カメラにノイズが映ることがあります。
以前、オートバイにビデオカメラを設置して、サーキットを走行したことがありますが、一定以上のスピードになると、カメラにノイズが走って砂嵐しか映らず、とてもがっかりしました。
どうやら、高速走行時、パルス発信がカメラに干渉するようです。

カメラだけが頭をつける理由とするならば、もう少し目立たないか、あるいは耐弾性をもたせた構造にすべきでしょう。その点、優秀だと思えるのは、前述のアーマードトルーパーです。
彼らの頭部は戦車の砲頭のようになっているため、左右に回転するか、可動せずにカメラのマウントとしての機能しかもっておりません。ただし、一眼レフカメラのように、ボディがむき出しになっていたりするので、装甲板で覆うなどの対策が必要です。


何だか、ひどく不恰好なロボットしか想像できないのはワタクシだけでしょうか。
そして、戦場において彼らは活躍できるのでしょうか。
歩き始めたばかりの赤子のように頼りなく戦場を歩き、大した火力もないまま敵陣に飛び込むロボットの姿を思い描くと、何だか胸が痛くなってしまいます。
トラブルも多そうですし、メンテナンスも大変でしょうから、ランニングコストも高いはずです。
パイロットはあちこちに擦り傷をつくり、かつほとんどの者が腰痛もちです。
いつもスクリーンばかりを観ているため、眼も悪くなるでしょう。

ここまで書くと、ロボットを兵器として運用させるのは難しくなってきますね。
ロボットを愛してやまない、ワタクシもロボットの必然性に懐疑的になってしまいます。

それでも、ワタクシは、ロボットを登場させたいのです。
次回は、ワタクシなりに「こうすれば、問題は解決するのではないだろうか」という形で、意地でもロボットを登場させる方法をこじつけてみたいと思います。