夏の夜のにおい

さっきプラゴミ出してきたんだけど、もう虫が鳴いてんのね。

うちのアパートの隣には、だだっ広い空き地があって、そこからは草のにおいもしてきた。


キャンプ場の夜もこんなんだった。
一日走り倒してへとへとになって、汗をシャワーで流したら、もうジーパンもブーツも勘弁だ。

Ｔシャツにタンパン、ゴム草履になる。
こうなると、革ジャンにグラサンのハーレー乗りも、ナイロンジャケットのレプリカライダーも、小洒落たカッコのオフ車のアンチャンも、みな平等。いかつさもカッコよさも半減するから、自然に挨拶なんか交わしたりして。

夜空を見上げながら、今日の走りを自画自賛しつつ悦にひたり、未だ見ぬ景色に思いをはせる。

仲間うちで遊びにきた連中の会話も程よいBGMだ。時々、それで孤独を感じるが、それもまた一人旅のよさ。
普段飲み慣れた酒もタバコも、ちょいと違った味になる。

そして、こうも思う。
こんな満ち足りた気持ちで空を見上げる夜は、人生であと何回お目にかかれるのだろう、と。


夏の暑さは大嫌いだが、こんな夜にまた会えるのならば、炎天下のツーリングも悪くない。