塩釜へ行った。
ひょんなことから、楽団四季のメンバー4名のうち3名が集まった。
他にも人がいたのだが、こういう形で酒を飲むのは10数年ぶりだった。
別にバンドがどうのこうのということで飲んだわけではなかった。
でも、被災した時、ドラムとは「ちゃんと生き残って、落ち着いたら、酒を飲もう」と約束していた。
4か月以上たって、やっと約束が果たせた。
自然とバンドの話になった。
飲み会に参加していた知人は、楽団四季のことを良く知らないので、いちから説明。
酔っ払っていたから、あまりうまく話せなかったし、伝わらなかったと思う。
そんなことを話しているうちに「もう一度、ステージに立ちたい」とドラムが言いだした。
だが、ドラムは10年以上も前に「ドラムは辞めた」といって、グレッチのギターを買った。
楽団四季の活動を続けるには、新しいドラムを入れるしかなかったのだが、そんなことができるはずもなく、結局は活動休止に追い込まれた。
そのことを言うと「オレがもう一度、ドラムを叩く」といった。
耳を疑ったが、どうやら酒の席で盛り上がったからではなさそうだ。
「とにかく、みんな、もう一度、最初からやり直そう」
ドラムは繰り返した。
うれしくて、また飲んだ。
結局、6時間半くらい、バーボンも10杯以上は飲みまくり、這うようにして実家まで辿りついた。
頭がグワングワンする中、ベースを鳴らしてみた。
指板を押さえる指と、弦をはじく指がなかなかリンクしない。
駆け上がる時は何とかなるが、駆け下りるとダメになる。
そうこうしているうちに、手の甲が痛くなってきた。
30分ほど弾いてみたが、明らかに腕が鈍っている。
だが、これからは練習の為の練習ではなく、あの頃のように4人が集まって何かをするための一歩なのだと思うと、嬉しくてたまらなかった。
近いうちに、曲を決めようということになった。
多分、4人がそれぞれまったく違う趣味の曲を選ぶのだろう。