20年以上も昔のオートバイ雑誌を手に取る。
ZだのCBだの空冷4発、それに混じってZX系の水冷4発に乗るライダーたち。
だいたいが20代半ば。
30代くらいになると、ちょっとコワモテの顔役といった風情の大先輩で、若造の自分らにバイクの乗り方や人との付き合い方を教えてくれていた。
あれから時が過ぎた。
たまにバイク雑誌をめくると、当時の生き残りといいますか、よくぞいまも乗っていらっしゃる!てな人たちばかり。
アラフォーどころかアラフィフ、下手すると前期高齢者みたいなライダーたちが顔を連ねている。
旧車もビックリするほど高額になったしね。
当時は50万円も出したら、それなりのコンディションの個体が手に入り、100万円、つまりビッグバイクの新車価格に近い金額を出せば、ベストコンディションのマシンが手に入った。
実際、自分が買った初代Z1Rは20万円そこそこ、いまのZ1Rは35万円とかそれくらいで買ったものだ。
それが、いまやそんな金額じゃ書類つきフレームすら買えない(笑)。
200万、300万は当たり前。
こないだなんか、700万円のMk2みてひっくり返りそうになった。
これじゃ旧車なんか気軽に乗れない。
常識的な金額で売っている現行車両を買って、故障とパーツ廃盤のリスクから解放されてノビノビ乗った方がいい。
自分がその代表者みたいなものだけど、旧いバイクに囚われているのは、本当に哀れというか、視野狭窄だと思う。
乗って遊ぶのは楽しいけど、それを2くらいだとしたら7か8くらい、故障や盗難などの恐怖がある。
実際「今日はどこそこに走りにいくぞ」と思っても「ちゃんと動くだろうか」「壊れたらどうしようか」という不安がかなり大きい。
20年前には、あまり考えたことも無かったが、いまはそういう心配が先行する。
そんなのはボロに乗っているお前が悪い、と言われたらそれまでだけど。
違うジャンルだけど、音楽。
ロック以外は音楽じゃない、みたいな考え方。
自分の考え方としては「ロックは誰もやったことのない奇妙奇天烈な音楽」であり、スリーコードを8ビートで弾くのは、すでにロックという型枠に囚われてしまった既存の音楽だと思っている。
同じように旧車じゃないとバイクじゃない、という考え方…そうじゃなくても、現行車両の良い部分に気づけなくなった人達は、もう時代から取り残されている。
ファーストガンダム以外はガンダムじゃない、とか、あのシリーズじゃないと安心できない人達が一定数いるんですよ。
ノスタルジックなコンテンツはお金儲けになるかもしれないけど、イノベーションは生まれない。
アメリカもスパイダーマンやバットマン、スーパーマンなどのヒーローものは、何度もリブートして、それがもはやひとつの手法になっている。
だれそれ版バットマン、だれそれ版スパイダーマン。
映画単体は、すごく面白いし、こういう解釈できたか!と、それこそ原曲をアレンジするEDMみたいなノリは好きだけど…
けど、この先、語られるような新しいヒーローは生まれない。
日本でもウルトラマン、仮面ライダー、戦隊シリーズを作り続けているが、あの枠からはみ出て大成した作品はあるだろうか。
一世を風靡したエヴァンゲリオンも結局はリブートだし。
バイクに話を戻す。
個人的な予想では、これからさらに旧いバイクが伸びていく可能性は少ないと思う。
世の中のモビリティは、バイクも含めてどんどんEV化されていって、ガソリンスタンドという石油製品を販売するビジネスは電池交換所、充電場所にとって代わられる。
ガソリンの流通量は激減、単価も急騰する。
排気ガスに対する法令などで、ある種の条件を満たしていない車両は地域内への乗り入れが不可能になるかもしれない。
走っていいのは、限られたクローズドだけ。
そうまでして維持したいと思う人たちが、どれだけいるだろうか。
それが何年後に訪れるのか、そんなことにはならないのか分からないけど、新しいものに目をむけ、変化に順応していく方がいい。